前 ・
足りない。

何かが足りない。

それが何であるか、アンジーは薄々感づいてはいた。

だが、言葉にするのが怖くて、アンジーは全身で

それを否定するかのように働いた。

けれど、最近ではその事に無理が生じているのだろうか、

酷く嫌な夢を見る様になっている。

目が覚めると、その夢の内容は全く思い出せず、

ただ残るのは悪寒と、

汗にまみれた酷く熱を持った身体だけ。